そもそも「薬膳」とは?

そもそも「薬膳」てどんなもの?

皆さんは「薬膳料理」と聞いてどんなことを思い浮かべますか?

「漢方薬を使ってる?」

「苦くてあまり美味しくないのでは?」

「家で作るのは難しそう」

「食材が調達しにくそう」

「病気を治すために食べるもの?」

そんなイメージをお持ちの方も多いと思います。

 

でも実はこれ、全て違うんです!

 

残念ながら薬膳はこういった誤解を受けがちです・・・

それでは「薬膳」てそもそも何なのでしょうか?

 

薬膳とは・・・

季節・体質・体調・症状などに合わせて食材を選び、体のバランスを整えるために作る食事のこと。

 

私達が普段食べている食材には体に影響を与える様々な作用・効能があります。

それは長い長い歴史の中で、先人達が経験を積み重ねながら見つけ出してくれたものです。

薬膳料理ではその時に体が求めている作用・効能から食材を選び、メニューを組み立てています。

なので症状によって漢方薬のようなクセのある物を使うこともありますが、必ずしもそうとは限らないのです。

そしてあくまでも「体調を整える」のが目的であり、病気を治してくれる薬とも違うのです。

 

イスルクではそんな薬膳料理をより美味しくより食べやすく作ることを心掛け、

ご家庭でも作ってもらえるように身近な食材を中心にメニューを考案しています。

 

 

知ってると楽しい!薬膳の基本知識

薬膳料理を作る時にはまず、食べる人が今どのような状態か、どんな症状があるか、季節はどうか。

といったことを総合的に診ていきます。

その時に主に使われるのが3つの基本知識です。

これを知っていると毎日の食事が少し楽しくなるかもしれません!

 

1.陰と陽

自然界に存在するものは陰と陽に分けられ、陰と陽は常に変動しながらバランスを取り合っています。

例えば夜(陰)と昼(陽)、冬(陰)と夏(陽)、月(陰)と太陽(陽)などがあります。

人間の体でいうと陰は体内の水分や血液、体を休ませたり冷やす作用

陽は体内のエネルギー、体を動かしたり温める作用

このバランスが崩れると体調を崩すことに繋がります。

  • 陰が多過ぎる(陰盛)→体が冷える、下痢、腹痛など
  • 陽が多過ぎる(陽盛)→体が熱い、喉が乾く、落ち着かないなど
  • 陰が足りない(陰虚)→体が火照る、乾燥感、部分的に暑い、イライラなど
  • 陽が足りない(陽虚)→寒がる、休みたがる、回復に時間がかかるなど

陰陽のバランスには季節も大きく関わります。

体の変化や季節の変化を感じながら、陰陽のバランスを整えることが大切です。

 

 

2.気・血・水

「気・血・水(き・けつ・すい)」は人の体をつくる三大重要物質。

それぞれが違う働きをしながら助け合っていて、体内に充分な量があり巡っている状態がベストです。

基礎知識の中ではイメージがしやすく、体調の変化も感じやすいと思います。

 

☆「気」は目には見えないエネルギー

「元気が出る」「気合いを入れる」「勇気を出す」など、普段からよく使う「気」という言葉。

体や心にパワーを与え温めてくれるようなイメージがありませんか

薬膳に出てくる「気」もそのイメージに当てはまります。

「気」は目には見えない生命エネルギーです。

気は主に体の中を巡りながら血・水を全身に運ぶ働きをしています。

この働きのおかげで代謝が促され、体を温めることにつながります。

また臓器や血管の周囲を巡りながら水分の漏れ出しを防いだり、臓器をあるべき位置に保つ働きもしています。

さらに体表にも巡り、外の刺激から体を守るバリアにもなっているのです。

気が不足することを気虚(ききょ)といいます。

気虚になると体内が温まらずに臓器の働きが悪くなったり、水分の漏れ出しが起きて汗が止まらなくなったり、

バリア効果の低下により風邪を引きやすくなったりします。

気が巡らずに滞っている状態を気滞(きたい)といいます。

気滞になるとイライラや緊張しやすくなるなどの精神的乱れや、張ったような痛みを引き起こします。

皆さんは気になる症状はありませんか?

いつもなら気にならないことでイライラや緊張を感じていたら、それは気滞によるものかもしれません!

少しリラックスする時間をとって、自分の気の巡りを感じてみてくださいね。

 

☆体に心に、栄養を与えている「血」

薬膳でいう「血(けつ)」は皆さんもよくご存知の体内を流れている赤い血液のことです。

全身を巡りながら内臓はもちろん、爪や髪など体のあらゆる部分に栄養を与えています

そのおかげで臓器や組織は潤い、それぞれの働きを円滑に行うことができます。

また血は「思考の源」ともいわれていて、体だけではなく心(精神)にも栄養を与えています。

血が満ちていることで精神状態も安定するのです。

血が足りない状態を血虚(けっきょ)といいます。

全身を満たす栄養が足りなくなるので、めまいやふらつきなどの症状が起きます。

目の疲れ・爪のトラブル・髪のトラブルにもつながり、

睡眠の質の悪化や不安感・心配が増えるなどの精神の乱れも引き起こします。

血が停滞して巡りが悪くなる状態を瘀血(おけつ)といいます。

瘀血は打ち身などの外傷が原因になる場合や、気虚や気滞によって血がうまく運ばれずに起こる場合があります。

瘀血になると同じ場所がチクチクと痛んだり、肩こりや末端の冷えが起きたりします。

顔色がくすんだり青あざができやすくなるなどの肌のトラブルにもつながります。

血のトラブルは特に女性に起こりやすいです。

月経後や出産後などは特に血虚の状態がひどくなりますので、意識的に血を補う努力が必要です!

 

☆全身を潤す「水」

「水(すい)」体内にある血液以外のさまざまな水分をいいます。

汗・唾液・涙・尿・鼻水などの分泌液も含まれます。薬膳では津液(しんえき)ともいわれます。

水は内臓や皮膚・喉・鼻・目・耳・髪など体の隅々まで行き渡り潤いを与えています。

筋肉や関節も潤し、体が滑らかに動くのを助けています。

そして体が熱くなりすぎないよう、冷却する働きもしています。

水が足りない状態を津液不足(しんえきぶそく)といいます。

潤いが行き渡らなくなるので、喉が乾く・乾いた咳・肌が乾燥するなどの症状が出ます。

水が停滞している状態を水滞(すいたい)いいます。

水が巡らずに滞ることで、むくみ・吐き気・体のだるさなどを引き起こします。二日酔いも水滞による症状です。

暑い時季はどうしても冷たい飲み物をガブガブと飲んでしまいがちですが、

冷房などによる冷えと重なって水滞になりやすくなります。

自分の体調・体質だけでなく季節の変化を気にすることが、薬膳を上手く取り入れていくポイントです!

 

 

3.五臓

「五臓六腑に染み渡る」という言葉は聞いたことがあると思います。

「五臓六腑」とは薬膳のベースである中医学からきています。

その中で五臓とは「肝・心・脾・肺・腎」のこと。

「肝=肝臓」ではなく、肝臓機能や関係の深い六腑なども含めたもう少し広い範囲をいいます。

五臓はそれぞれに違う働きを持ち、助け合い影響し合いながらバランスをとっています。

 

☆肝

肝は自然界でいうと、上へ外へと伸びやかに成長する「木」のイメージです。

気を上へ外へと巡らせる管理役をしていて、精神的ストレスを受けやすいのが特徴です。

<主な働き>

  • 気の巡りの管理
  • 血を貯蔵し必要な時に必要な場所に送る、全身の血液量の管理

<肝が不調になると>

  • 張ったような痛みや体の緊張感
  • 自律神経の乱れやうつ症状
  • しこりや生理不順などの瘀血症状
  • 目のトラブル、爪のトラブル、筋肉のしびれや痙攣

 

☆心

心は炎上し温熱をもつ「火」のイメージ。五臓の中ではリーダー的な存在です。

<主な働き>

  • 血を循環させ全身に栄養分を行き渡らせる
  • 意識・感情・思考など精神的な活動の管理

<心が不調になると>

  • 動悸や息切れなどの血流の乱れ
  • 不安や物忘れ、不眠、夢をよく見るなどの精神的な乱れ
  • 舌先が痛い、呂律が回らない、味がわからないなどの舌の症状

 

☆脾

脾は作物の種を受け入れ養い育てる「土」のイメージ。消化吸収機能を担っています。

<主な働き>

  • 飲食物を栄養分に変えて全身に運ぶ
  • 血の漏れ出しや内臓の下垂を防ぐ

<脾が不調になると>

  • 食欲不振や胃もたれ、食後に眠くなるなど
  • 内臓の下垂、めまい、ふらつき
  • 不正出血、鼻血、内出血などの出血症状
  • 味を感じないなどの味覚異常

 

☆肺

肺は清潔でキメの細かい「金」のイメージ。

呼吸管理のリーダーで、外からの病気の影響を受けやすく乾燥に弱い臓器です。

<主な働き>

  • きれいな空気を取り込み、汚れた空気を排出する呼吸の管理
  • 気や栄養分を全身に行き渡らせる
  • 水分代謝の調節

<肺が不調になると>

  • 息切れ、動悸、声が出ないなどの呼吸の乱れ
  • 咳、鼻詰まり、くしゃみなどの風邪のような症状
  • 汗や尿が出ない、むくみなどの水分代謝異常

 

☆腎

腎は寒涼で潤いをもたらす「水」のイメージ。

水分代謝のリーダーであり、成長・発育・生殖・老化にも関わっています。

<主な働き>

  • 生命エネルギーの源を貯蔵して成長、発育、生殖を管理
  • 必要な水分は体に送り、不要な水分は排出する水分代謝の管理

<腎が不調になると>

  • 手足の冷え、足腰に力が入らない
  • 尿漏れや尿が出ないなど膀胱のトラブル
  • 白髪や抜け毛など髪の毛のトラブル
  • 耳鳴りや難聴など耳のトラブル
  • 骨がもろくなる、記憶力の低下などの老化現象

 

「陰と陽」「気・血・水」「五臓」などの基本知識を用いて症状の原因を導き出し、

それに合わせた食材や調理法で食事を作るのが「薬膳料理」ということです。

ご自分の体質や今の体調に当てはまるところはありませんか?

まずは自分の体を知ること、体質や体調の変化を感じることが薬膳を知る第一歩です!

 

文責:大家泉